SECONDS BEFORE THE BIG ONEScientific American 2011.04

横山 大地 訳分



 地震はそれらが起こる前に何の前触れもないという点において自然災害の中では独特である。1989年10月17日にサンフランシスコ湾付近を襲ったロマ・プリエタ地震の場合について考えるとサンフランシスコ・ジャイアンツとオークランド・アスレチックスでのワールドシリーズの夕方の試合のちょうど準備運動のようなものが行われていた。午後5時14分、サンアンドレアス断層の急なずれはダブルデッキ式高速道路の1.5マイルの部分とオークランドとサンフランシスコをつなぐベイブリッジの多数部分を崩壊させるには十分な力をもってその地域を揺らした。60人以上の人々が亡くなった。

 長年にわたって科学者達は人々を安全な所に移動させるために予測者達にいつどこで大きな地震が起きるか正確に突き止めることを可能にするようななんらかの合図を探し回った。それは前兆だが、しかしながらかすかなものである。無駄な研究に数十年も費やした後、現在多くの地震科学者は前兆があるのかどうかということさえも疑っている。

 しかし、全ての希望がなくなったわけではない。地震のひとつめの微弱な動きの数秒間以内に科学者は現在どのくらいの強さ、またどれくらいの規模の揺れがおきるだろうということを相当確実に予測することが可能である。多くの機関が最近の通信技術による新しい科学がまとめられたことによって、数十秒の前兆を得ることができた。それはおそらくちょうど一分の半分の時間で、被害を受ける状態にあるそれらのために

 それはあまりたいしたことではないように聞こえるかもしれないが、しかし発電所や鉄道網、自動ドア式エレベーターに運転停止の警告を送ることや、消防に通報するには十分な時間である。

 ロマ・プリエタ地震は起伏の激しいサンタクルーズマウンテンにある湾の南が震源であった。地面が揺れ始めた後、損害を与える揺れはサンフランシスコからオークランド間の60マイルを伝わるのに30秒以上かかっている。その場所で被害の80%以上が起きている。もし地震早期警戒システムが当時あったとしたら、領域中心におそらく20秒で警告を伝えることが可能だったであろう。これは電車を減速、停止させるには十分な時間であり、支持の広がりは飛行機の最終進入や街路灯を赤く変えたり橋やトンネルのような危険な建造物に車がはいることを防ぐ。被害や損害を減らすために作業環境が危険な場所で働く労働者は安全な場所に移動させることや機密関係の機器を保持モードにすることも可能だったであろう。学生や会社員は揺れが到達する前に机の下に移動することができたであろう。その地域は迫りくる脅威を乗り切る準備ができるだろう。そのようなネットワークメキシコ、台湾、トルコ、ルーマニアのような世界中の様々な場所に展開されていっている。日本のシステムはその中でもっとも進化している。全国的なネットワークによってテレビ、ラジオ放送局、いくつかの携帯電話会社、ショッピングモールの拡声装置、他の公共の場所を通して警告を発する。このシステムがネットワークで繋がってから3年半の間で、12を超える地震に対してすでに広い範囲に警報を鳴らしている。工場、学校、電車、自動車の中にいた人々は準備のための少しの貴重な時間を得られた。警報のおかげで混乱や道路交通事故の報告はなかった。アメリカは世界の他の地域と比べ遅れているが、しかし断層が連なる地域であるカリフォルニアに展開されている新たな試験台は本格的な警報システムを程なく最先端で進むに違いない。カリフォルニアは遠い昔から次の大きな地震がもうすぐやってくると言われていた場所である。もし今警報システムが作られたなら、我々の命を守ることが可能だろう。



  <騒ぎに備える>

 地震早期警戒システムは巨大地震の初振動を見つける。もっとも激しい揺れの進行は警報システムの引き金となる。カリフォルニアで計画されているシェイクアラートシステムはデジタルの地震計のネットワークを利用したものになる予定である。州周辺に展開された人口集中地域に1分前に事前の警告をする(時間は震源地の位置に左右される)。警報は会社、居住者、公的機関に備える時間を与える。


 地震早期警告の科学

 全ての地震は2種類の波によってできている。P波は音波のように地震感知ネットワークからの信号を組み合わせて大地震を見極めて震央をみつける。S波がまだ届いていない場所へ警報を電気的に送る。揺れを感知した地震計の数が多ければ、マグニチュードや震央の場所の予測は高い精度になる。




福田 直哉 訳分



  波からの警告

 私たちの足元の地面は動いています。地殻プレートは地球表面を漂っており、大陸の一部が互いに擦り合ったり、高速道路の玉突き事故のように衝突したりする。地殻(私達が住んでいる地球のプレートの最外層)は弾性だが、プレートの境界で歪がとても大きくなるまで地殻が曲げられる。それが耐えられなくなる時、それまで数十年にもわたり蓄積されてきたエネルギーが地球の表面を引き裂き、その経路上の全てのものを揺らす。

 毎日数百の地震が発生している。幸運にもほとんどはとても小さく、高感度地震計の助けがないと気づくことができない。毎日のようにある地震は断層面がわずか3~6フィートずれるだけで、人間は揺れを感じることはできない。マグニチュード5.0の地震は断層面を1~2マイル破断させ、人間は揺れを容易に感じることはできるが、現代の建物は揺れに耐えることができる。マグニチュード8.0では数百マイルも破断が伝播し、裂け目は表面まで達することもある。建物は2つに引き裂かれるだろう。地震での歪の蓄積を観察することによって、地震学者は地殻の多くの領域が破断する寸前であるとわかっている。しかし、表面下の深い断層の細かい構造は破壊部分と地震の破断の伝搬の両方に重大な役割を果たしているが、構造を直接サンプリングすることはできない。このため、ほとんどの地震学者は巨大な地震が発生する数時間もしくは数日前に予測することが可能な予測システムを作成することは不可能であると考えている。ここ当分の間、最も実行可能なことは巨大地震を素早く検出し、警報を鳴らすことである。

 地震の幾つかの固有の特徴はこの課題の役に立つ。私達が感じる継続された衝撃は実は段階的にやってくる。地殻の破壊から来るエネルギーは2つの形、P波とS波(56ページのボックス参照)で地球を伝わる。両方のタイプの波は同時に断層を出発するが、類似点はそれだけだ。P波は音波のような疎密波である。それらは比較的早く伝わるが、大きな力は運びません。地震の時、突然の垂直方向の衝撃で感じられる。S波は海の波のようで、ゆっくり伝わり、ほとんどのエネルギーを含んでおり、最も強い揺れを引き起こす。地面の動きは水平方向と垂直方向であり、波の中にいる小舟のように建物全体を揺らすことがある。

 更に、すべての波が同じような形ではない。ずれた領域の大きさに応じて異なる形になる。小さなずれた領域から放射状に出たP波は比較的小さい振幅で高い周波数を持つ、小さいが鋭い振動になる。大きな地震では広い領域の断層を破断させ、大きいずれを生じ、P波は振幅が大きくなり、低周波数である。それは小さな鳥の鳴き声とハイイログマの咆哮の違いに似ている。

 一台の地震計はこの情報に基づいて地震のマグニチュードを推定することができる。大きい振幅で低周波数であるP波を検出したら警告を出す。この1台による手法は震央の近くに最も早く警報を与えることができる。しかし、地震の破断面の特徴は多様であり(すべてのマグニチュード5.0の地震が同じ波形なわけではない)、地震計の真下にある特定の堆積物はP波を変化させる。こうした変動性は(地震が発生していないのに警報を発する)誤報と(有害な地震が進行中の時に警報が出ない)見逃しの両方の危険性が増してしまう。

 誤報と見逃しの可能性を減らすために、数マイル離れた場所に設置した地震計で記録したデータを組み合わせる。この方法によって、それぞれの地震計の下の堆積物は異なっているので、マグニチュードの平均推定値を得る事ができる。この手法は中央部に機器のデータを送り、それらを結合させるための地震観測網が必要だ。しかし、データを送信し、分析するには数秒の時間がかかってしまい、1秒経過するごとに有害なS波は2~3マイル伝わっていく。

 最善の手法は単独の観測点と地震観測網に基づいた手法を組み合わせたもので、震央の近くの地域への迅速な警報と、遠くの地域への数十秒間の警報を提供できる可能性がある。

 どんなシステムも正確さと警報の速さは相反関係にならざるをえない。地震観測網が地震の情報をより多く集めれば、予測精度は向上するだろう。しかし、揺れるまでの時間は短くなるだろう。一部の利用者はより早い警告を得るために、誤報や見逃しを許容するかもしれない。例えば、学校では生徒を避難させるため、より早い警報を望むだろう。年に数回の誤報は皆が何をすべきかを知るのに必要な定期訓練を提供する。原子力発電所は対照的に、炉を止めるのに1秒しか必要としないが、それは莫大なコストがかかる。管理者は強い揺れであると確信するまで待とうとするだろう。


 警報の結果、当局は揺れが起こった50秒前にメトロを止めることができた。そして、学校は予定通りに避難した。


 現在、世界中で5つの緊急地震速報システムが導入され、各々が位置する国の特定の地形に合わせられます。メキシコでは、太平洋沖沿岸の地震計で沖合の沈み込み帯で発生した揺れを検出し、震動を増幅させる沈泥の上に築き上げられている人口2000万人の巨大都市のメキシコシティで警報を起動させる。

 同様に、ルーマニアのシステムは首都ブカレストから100マイル離れていているカルパチア山脈南東部で発生する地震の警告を首都に提供する設計になっている。

 これとは対照的に、日本は全国で地震を起こしやすい。6,000人以上が死亡した1995年の阪神淡路大震災の後、日本は、全国をカバーするために、2,000以上の地震計を設置した。それは、現在世界で最も先進的な警告システムである。   

佐藤 真吾 訳分