第03回英文輪読05月14日
'入井'訳
産業革命で,あらゆる種類の機械が広く普及し始めたことにより,良好な摩擦,潤滑,摩耗を制御する必要性が高まってきた. この期間中,Beauchamp Towerの実験研究(1884年)とOsborne Reynoldsの理論研究(1886年)により,流体潤滑の原理が初めて発見された. 流体潤滑理論の後の発達は,現代の機械の潤滑のための信頼できる軸受の設計を可能にした. 潤滑は9章と10章で論じられている. 20世紀の間,巨大産業の成長と新技術の発展は,より一層の良好なトライボロジーに対する需要を煽った. この要求を満たすため,前世紀に多数のトライボロジーのエンジニアリングソリューソン(解決策)が開発された. 特に,
- 流体軸受設計(9章)
- 接触力学理論(3章)
- 合成潤滑油
- 固体潤滑剤
- 耐摩耗材料
- BowdenとTaborの分子凝着による摩擦理論(4章と11章)
- GreenwoodとWiliamsonの多数の凹凸の接触領域の解析(3章)
- Hardyの境界潤滑の研究(10章)
- Archardの凝着摩耗の式(12章)
'池田'訳
- 科学 - 摩擦、潤滑、接着性、摩耗の原子や分子の起源の発見を容易にする、ナノスケールでの材料を特徴付けるための新しい実験と理論的手法
- 新しいマイクロ・ナノスケール技術への期待 - 一度でもそれらのマイクロおよびナノスケールで発生しているトライボロジーの問題の解決策が開発されれば、小型化された可動部品における多くの画期的な技術が可能になると考えられている。
1.3.1 ナノスケールのトライボロジーを可能にする科学の進歩
接触の本質はその微視的起源の研究を困難にしている。 一般的に、図1.5に示すように、接触は多くの接触領域で対面上の小さな突起や凹凸の頂点で発生する。 これらの接触は二つの固体の間に挟まれているので、ほとんどの科学的な特性評価技術がまったく使用できない。 この困難に加えて、接触は主に表面粗さの頂上で発生する。これは接触による影響を受ける材料の体積がナノスケールぐらい小さく検出するのが難しい傾向があることを意味する。 接触している微細構造が静的でないほど、お互いに擦れあっている凹凸が押されたり引っ張られたりすることが、問題の複雑化を促進させるが、接触が進むにつれて発達する。
図1.5 (a) 表面粗さによって、2つの固体表面間の接触は、主に表面の凹凸の頂上で起こる。 (b) 接触前か後の表面分析のための真空技術 オージェ電子分光法(AES)=電子を打ち込み、放出された電子のエネルギーが分析される。 電子分光敵化学分析(ESCA)=X線を打ち込み、放出された電子のエネルギーが分析される。 二次イオン質量分析(SIMS)=イオンを打ち込み、散乱・排出されたイオンのエネルギーと電荷質量の比が測定される。 (c) このようなラマン分光法などの光学技術、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、和周波発生装置は現在、埋もれた接触界面の分析に使われている。 (d) 原子間力顕微鏡(AFM)の表面で擦れているチップは、単一の凹凸接触をシミュレートするために使用することができる。
'加藤'訳
幸運なことにも、過去半世紀にわたって、表面および微小量の材料の特徴を示すための多くの分析技術が開発されてきた。
これらのより新しい技術は、接触の間、表面の構造および科学的性質がどのように発達し、トライボロジー的現象に影響を与えるのか、ということについての豊富な情報につながった。
[図1.5(b)に示されている]表面分析技術の1つのカテゴリーについて、表面がそれぞれ高真空に置かれており、電子やイオン、あるいはX線やエネルギー分析器によって測定された、放出された電子あるいはイオンの運動エネルギーによって照射されている。
表面近くの電子あるいはイオンだけが検出器に向かって放出されるので、これらは表面構造および科学的性質を決定するための非常に繊細な技術であるが、しかし、真空の必要性というのは、これらの技術が接触前後の表面の分析のためだけに用いられる、ということを意味する。
トライボロジー的な表面の科学的性質および分子構造の特徴を示すために役立ついくつかの真空技術は以下である。
- オージェ電子分光法 (AES)
- 化学分析用電子分光法 (ESCA)
- 二次イオン質量分析法 (SIMS)
最近になって、図1.5(c)に示されるような、接触中で見えない表面の特徴を示すことができる、いくつかの光学的、あるいはX線のプローブ(探査子)が開発された。
- フーリエ変換赤外分光法(FTIR)
- ラマン分光法
- 和周波発生
- X線回折とX線反射率
'齋藤'訳
一般的に接触は凹凸の頂上で起こるので、接触表面のトポグラフィーを特徴付けることは、常に摩擦表面を特徴付けるための重要な起点となっている。
最初のうちは、一直線に沿ったミクロの解像度で側面を測定しただけの触針式粗さ計であった。
次に出てきたのが走査型電子顕微鏡であり、10億分の1の側面解像度で表面の画像の処理をすることができるが、表面形状の高さを測ることができない。
つい最近のトポグラフィー測定は、探針技術を走査することによって著しく影響を受ける。
走査型トンネル顕微鏡や、更に重要である原子間力顕微鏡で厳密な原子レベルの解像度で三次元トポグラフィー画像を生み出すことができる。
トポグラフィー測定のための原子間力顕微鏡の使用については2章で論議されている。
トポグラフィー測定に加えて、AFMは図1.5(d)に示したような一つの突起の先端の接触力を測ることもできる。
したがって、1986年のその発明以来、AFMはナノスケールの接触力や摩擦力で使用するための重要なツールのひとつになっている。
接触力測定のためのAFMの使用については6、7、8、10、11章で論議される。
表面力装置(SFA)は、AFMより10年早く開発されたもので、接触表面間の力を測るためのもうひとつの重要な装置である。
SFAでは、力は様々な化学的環境の中で2つの原子間的に滑らかなマイカシートの間で測定される。
SFAでの力の測定は7、8、10章で論議されている。
過去数十年を越えるコンピュータ業績の劇的な成長は、物理的現象を予測するためのシミュレーション技術を基にした多くのコンピュータの普及を導いた。
これらのシミュレーション技術のいくつかは、摩擦現象を学ぶことに採用されている。