第01回英文輪読
'青木'訳
6 硬質粒子による摩耗 6.1 導入と専門用語 この章では，アブレシブ摩耗とエロージョンについて重点を置く．アブレシブ摩耗では材料は硬質粒子によって表面から取り除かれるか，動かされる．時には,対向面の硬い突起によって表面に押し付けられ，表面に沿って滑る．浸食作用の説明にはいくつかの定性的な専門用を使うことができる．図6(a)に示されている二元アブレシブ摩耗と図6(b)に示されている三元アブレシブ摩耗はよく区別される．二元摩耗は対向面上の硬い突起によって引き起こされる．一方，三元摩耗では硬質粒子が自由に転がり，異なる2つの滑り面の間を滑る．岩を砕くドリルビットは二元摩耗を経験するかもしれない．一方，滑り面の間に混入した砂の粒子はおそらく潤滑油の中に汚染物質として存在し，三元摩耗を引き起こすだろう．三元摩耗によって摩耗率は一般に二元摩耗よりも低い．けれども，2つの場合における材料除去のさまざまな仕組みは本質というよりむしろ相対的重要性においてのみ異なる
'石黒'訳
他の用語では高い応力と低い応力の摩耗であるアブレシブ摩耗を記述した．高い応力の摩耗では研磨粒子の粉砕する力が越される為，摩耗の過程の間その粒子は粉砕され，一方低い応力の摩耗ではその粒子は壊れないで残る．ガウジング摩耗という用語は例として岩の粉砕機構のような硬い研磨材料の大きな塊による高い応力の摩耗を記述し，ガウジングは大きな破片において摩耗した表面からの材料の移動という結果をもたらす.しかしながら，上で述べたガウジングという用語が適切である表面変形の程度ははっきりしない．
'影山'訳
時として、摩耗はガス流によって運ばれるかもしくは流動液体の中に混入することで表面にぶつかる固い粒子によって引き起こされる。この摩耗の種類はエロージョンと呼ばれ、噴流や液滴の衝突によって引き起こされる損傷と区別するために大抵、固体粒子侵食や固体衝撃侵食と呼ばれる。侵食性の摩耗の場合の粒子速度は通常秒速５～５００メートルの間であるが、この用語は未だこの範囲外に適用することがある。もし固い粒子が液体によって運ばれているならばこの摩耗をスラリー侵食と呼ぶ。
'木村'訳
エロージョンやアブレージョンの原因となるその粒子は次のような用途に固有のものである。たとえば、採掘作業で砂や水スリラーを送るのにパイプラインがそうであるように、土壌を耕すのに使う道具は必然的に硬い粒子にさらされなければならない。他の状況では、空中の細かいグリッド粒子が潤滑油中に入り込むなどのように、その粒子は避けるのが困難な粒子になり得る。硬い粒子はトライボロジシステムの構成部からの酸化や磨耗によって局所的に発生する可能性がある。たとえば、酸化鉄の磨耗の破片は鉄のすべり摩耗で発生する可能性があり、またそのとき磨耗により更なる損傷を引き起こす可能性がある。二元磨耗は不完全な潤滑の二つのすべり面の硬さと粗さの差から生じることがある。スチールカウンターフェースに対して滑る比較的粗いアルミセラミックスはこの種の磨耗を引き起こす。
'今野'訳
アブレッシブとイローションは研いだり，磨いたりする過程や材料を切ったり形作ったりする方法において有効にも使用することができる． アブレッシブとイローション微粒子の根源と本質はこれらの間で異なるかもしれないが，結果として磨耗の過程は共通点を多く持っており，この章の残りで説明する． 我々はアブレッシブとイローションの原因である微粒子は“硬い”と前提にしてきた．次のセクションではこの部分によってほのめかされたことは何なのかきっちりと定義し，磨耗において重要な共通のアブレッシブとイローション微粒子の特性を議論しようと思う．我々はそれから材料の全てのタイプのアブレッシブ，イローション磨耗の現象について詳細に議論しようと思う．
'澤'訳
6.2 粒子の性質：硬さ，形，大きさ 6.2.1 粒子の硬さ 摩耗や腐食に関わる粒子の硬さは摩耗率に影響を与える．表面の硬さより硬くない粒子は硬い粒子に比べてそれほど摩耗を起こさない．粒子が表面より著しく硬い場合には，その硬さの正確な評価はそれほど問題にならない．この挙動は図の6.2に示されており，様々な砥粒で研磨された金属とセラミクスの広範囲での2元摩耗による相対摩耗率を表す．その摩耗率は，砥粒硬さH_aと表面硬さH_sの比H_a/H_s がおよそ1以下になる時，よりH_a/H_s に影響を受けるようになる．
'長谷川'訳
この挙動の理由は離散グリットと平面の間の接触の力学を調べることによって、理解できる。降伏点を超えると表面材料が塑性流動する場合、2.5.1節で説明したようにその一軸の降伏応力がYの3倍に達すると表面に大きな塑性流動が生じる。この面圧は表面の押し込み難さであり、粒子の詳細な形状にはほとんど頼らない。粒子が変形することなく、この接触圧力に耐えることができる場合にのみ、粒子に対する垂直荷重が増加するにつれて、表面の塑性押し込みが生じる。表面の圧力が3Yに達する前に粒子が流動または破壊により、破損すると、表面にわずかな塑性変形が生じる。
'石﨏'訳
平らな表面に押し付けられた球形粒子により, 最大接地圧は粒子材料の圧入硬度の約0.8倍になる. そのため, 硬さHaの球は, 表面の硬さHsが0.8Haよりも低い(Ha/Hs>1.25)とき, 表面に塑性変形を生じさせると見込まれる. 同様の現象はほかの接触形状における滑り線の場の理論にも派生でき, Ha/Hs>1.2の状態に限り, 球形以外の形状の粗い摩耗粒子では塑性的なひっかき傷が生じることが経験的に観察される. Ha/Hs<1.2の状態のアブレージョンを「ソフトアブレージョン」, Ha/Hs>1.2の状態を「ハードアブレージョン」とよぶ.
'加賀谷'訳
ある物質がほかの物質に引っかき傷をつけることが可能かどうかを知るために必要とされる，硬度の最小限の比率を観測することにより，硬度のスケールにおける物理的基礎がもたらされる．これを1824年に考案したのがオーストリアの鉱物学者であるモースである．モースは一連の10の鉱物に，連続した硬度を表す整数を割り当てた．このスケールにおいて，各鉱物はその鉱物よりも下のスケールの鉱物全てのみに対して引っかき傷をつけることができる．図6.4では，ダイアモンドを除いた隣接する標準物質間の押し込み硬さの比が一定であることを示している．このモーススケールにおいて，その比は1.6であり，引っかき傷をつける最小限の値よりはかなり大きなものとなっているが，たった10の標準物質のみで広い範囲に及ぶ硬度を表すことができる．
'大谷'訳
粒子が表面の硬さより1.2倍大きく持っているとき，腐食や摩耗はよりよい摩耗率をもたらすということは知られている. 我々は今，一般的な研磨する粒子と構造材料の硬さを検討することができる. 表6.1は一連の材料の値を表に表したものである. シリカ(石英)は，地球の近くの60%を構成しており, 最も一般的に生じる自然な摩擦異物である, そして800kgf/mm^2(800HV)の硬さを持っている. マルテンサイト鋼でさえこれの1.2倍以下の硬さを持つものだ. そしてそれゆえそれが鋼と非鉄合金が特にアブレシブ摩耗と石英の粒子による腐食を受けやすいのは明らかである. サーメットや耐摩耗合金のような硬い相を含んでいる材料は, また軟らかい構成物質を含んでいることがある. セラミック材料は十分に硬くそして一般の摩擦もしくは, 腐食性の粒子から均一で塑性変形を受けているかもしれない1，そのようなことが以下や7章で見ることができる．それらは大半の材料やコーティングのどちらか一方を使用したとき, 価値のある耐摩耗性を得ることができる.