第03回英文輪読
'青木'訳
式6.5に導かれる塑性変形による摩耗の単純なモデルは二元摩耗により取り除かれる材料の量が滑り距離に正比例するはずだということを予測する．さらに，垂直荷重にも同様である．炭化ケイ素粒子により二元摩耗を受ける3つの延性金属について図6.8に示されるように，この挙動は普通実際に観察される．
'石黒'訳
摩耗率は材料の硬さであるHについて反比例に変化するはずであることも式（6.5）は示唆している．多くの純金属はこのように振舞うけれども，合金はたいてい，より多くの複雑な挙動を示す．図6.9の焼き戻しした純金属（白抜きの点）と熱処理され加工硬化した鋼（黒抜きの点）の範囲にかけての二元摩耗試験の結果を参照してください．体積摩耗率の量であるQの逆数に比例している相対的な対摩耗性はバルク金属の押込硬さに反してプロットされる．純金属の実験の点は式（6.5）から予測されている原点を通った直線に近い所に存在している．しかしながら，鋼（黒抜きの点）の場合の結果はこのような線上に存在してないが，異なった傾斜の他の線上に位置している．この理由を理解する為に，私たちは式（6.5）のKの値に影響する要因を調査しなければならない．
'影山'訳
図6.9にて金属のバルク硬度に対する耐摩耗性を描く際、私たちは摩耗された表面での材料は塑性流動によってひずみ硬化を起こされていることと、それらの硬さは一般にバルクよりも優れていること、この二つの要素を無視した。アブレーションは表面材料へとても高いせん断ひずみを取り込んでいて、例えば銅や黄銅では、8以上の真ひずみが記録されている。図6.10に示すように、せん断ひずみはバルクへの深さとともに減少し、変形の深さと与えられた深さでのひずみはどちらとも研磨粒子の押し込み深さに比例する。アブレーションで拡大された摩擦仕事のエネルギーは主に、変形された表面下の領域でされた塑性仕事によって説明される。この加工硬化の結果として、変形された表面材料の流動応力はバルクのものよりも2もしくは3倍ほどである。しかしそれの正確な値はとても高いせん断ひずみへの特有の金属反応とアブレーション中にあてられる高温の可能性、ひずみ速度に依存する。それゆえよりよい関係性は、バルク材料の硬度とよりも大抵耐摩耗性と被摩耗表面の硬度との間で発見される。
'木村'訳
アブレージョンによって課される高いひずみのひとつの結果は、研磨前に金属に課されるどんな冷間加工その耐摩耗性に無視できるほどの影響しか及ぼさない。それはバルク硬度を上昇させるかもしれないが、摩擦速度によるいかなる影響も摩擦家庭それ自体によって導入されたはるかに大きなひずみに圧倒される。この挙動は図6.9に示される。0.4％炭素鋼の冷間加工はバルク硬度で著しい増大を引き起こすにもかかわらず、その耐摩耗性には影響を及ぼさない。 第二の重要な結果は強化メカニズムが高いひずみの強度の増大をもたらす場合にかぎり合金化は金属の耐摩耗性を増大させるということである。鋼中の細かい炭化物はそのような増大を引き起こすが、たとえば時効硬化アルミニウム銅合金のように比較的やわらかい粒子の析出硬化はそうではない。
'今野'訳
式6.5を導き出すために使われたモデルでは，私たちは，すべてのアブレッシブ粒子は同じ形状を持ち，それらが形成している溝から同じように除去していると仮定している．しかしながら，実際には粒子は同じ形状を持ち，異なったように表面を形成させるあろう．特に，アブレッシブ粒子は溝から移動した材料の１部のみの除去あるいは全く除去しないことにさえつながるように材料を変形させる可能性がある．図6.11は右から左へ硬質プラスチック材料上を滑って移動する硬い２次元くさび（理想化されたアブレッシブ粒子）による３つの異なった変形モデルに対する滑りライン場を示している．図6.11（a）は切削モードを示していて，このモードでは材料はせん断帯を通って偏向し，粒子の前面を上に向かって流れ，切りくずを形成する．
'澤'訳
この変形モードは，旋削のような直交切削加工をする時のバイトによって起こるものと全く同じである．このモードでは，粒子によって取り除かれたすべての材料が切り屑に移される．図の6.11(c)はもう一つの極端な場合，掘り起こしモードを図示している．そこでは変形した材料の隆起が，テーブルに敷かれた布きれに沿ってしわが押し進められるのとほとんど同じように，粒子の前方に押し進められる．掘り起こしモードでは，材料は表面から取り除かれず，高くなった隆起の材料が粒子の下に流動する．これら2つのモードの単純な違いは，切削の場合には材料が粒子正面の上へ流動するのに対し，掘り起こしの場合には下へ流動することである．
'長谷川'訳
中間の挙動を示す、3つ目の変形モードが図6.11(b)に示されている。粒子の前面と材料の突起部との間には、限られた滑り、または完全な接着さえも生じる。このモードでは定常状態のすべり線場を構成することは不可能であり、図6.11は突起部の発達における一つの段階を示している。変形は隆起した突起部の成長、および最終的な剥離からなり(線ADに沿ったせん断による)、これは連続的に繰り返される。このモードはウエッジ形成と呼ばれ、切削モードと同様、表面からの材料除去をもたらす。 図6.11(b)と(c)に示されている変形モードはすべり摩擦の文脈ですでにセクション3.4.4で説明されている。しかし、その場合、表面の凹凸は非常に浅い斜面を有するので、大きな迎え角でのみ起こる切削の変形モードの可能性は無視された。
'目黒'訳
図6.11で示しているそれぞれ３つの変形法を含むその力の分析は、（最も低い接線力を必要とする）最も重要な方法がどの滑り条件でも証明されることを可能にする。調節因子はθで、粒子の迎え角であり、粒子と表面間の接点のせん断応力である。これは境界面のせん断応力と塑性変形している材料のせん断降伏応力の比fで表される。完全な潤滑では、f=0、一方で完全な粘着質ではf=1となるだろう。f<0.5において２つの変形法だけが可能であり、それは切削とプラウイングである。低い値のθはプラウイングを助け、一方、臨界値θcより大きい値は切削につながる。F>0.5においては、３つの方法すべてが作用する。迎え角が大きくなるにつれて、プラウイングからくさび形成までと、くさび形成から切削まで、変遷が起きるとともに。
'石﨏'訳
図6.11に示す理想的な変形の状態は2次元で考えている. 実際には, あらいアブレシブ粒子はより分析が難しい3次元的な流動パターンを示すが, 上記の3つの議論と相似の関係がある. 表面を掘り起こすモードでは, 材料は粒子の後ろに堆積したり溝の脇に移動しており, ほとんど除去されることはない. 切削モードと隆起モードはどちらも摩耗につながる. 掘り起こしから破片形成への移行の形態は臨界迎え角θ_cで起こる. 図6.12は, 硬い球形粒子が剛体の塑性材料の上を滑る場合の変形の状態を示す. 球形粒子のめり込みの深さは有効な迎え角で定義されており, 図に描かれている.
'加賀谷'訳
理想的な組成剛体モデルにおけるθcはｆ二のみ依存するが，実在物質においてはそれに加えて加工硬化率や弾性特性，特にヤング率と表面硬さの比であるE/Hに依存する．Θcは全般の金属において，30°から90°の値であり，E/Hの値が高いとθcの値も高くなる． 2元摩耗におけるアブレシブ粒子の迎角の分布は，アブレシブ対向面の位置に依存する．その例として研磨紙でコーティングされた炭化ケイ素のグラフが図6.13に示されている．θcの値が，掘り起しよりも切削とウェッジ形成により表面の変形を起こすアブレシブ粒子の割合を℃のように決定付けるのか，またそれゆえθcはどのようにKの値に影響を与えるのか，ということがこの図に示されている．
'大谷'訳
粒子と表面間の低下している摩擦によって, 我々はすでに塑性変形におけるアブレシブ摩耗においての潤滑の影響を説明することができる (セクション6.3.4で論じる). 潤滑はより良い切削された粒子それゆえに高い摩耗率をもたらす. 粒子の角が迎え角θの分布を制御するので, セクション6.2.2で論じた粒子形状の効果もまた理解することができる. 角のある粒子は, , 高い迎え角になる傾向にあるものだ. そのため丸い粒子よりもすぐれた切削された粒子の比率そして高い摩耗率を導くことができる. もしアグレシブ粒子が凹みのある表面と頻繁に起きるプラウニングまた頻度の低い切断の間を回転する自由があるなら, 粒子が二次元摩耗のように対向面に固定されるよりも, 3次元摩耗に緋付けられた低い摩耗率もまた説明することができる.