第06回英文輪読
'青木'訳
これらすべての材料の反応は，個々のアブレシブ粒子によって引き起こされた変形のスケールと比較すると硬質相領域の大きさに依存する．この変形のスケールはそれぞれの粒子によって形成されたへこみの幅か深さのどちらかによって，説明することができる(その幅，深さというのは図6.7のaかxである)．もし，この大きさがおおむね硬質粒子(か繊維強化複合材での繊維)の大きさより大きく，分離していれば，材料は均一固体のように作用するだろう．この状況は図6.22(a)で図式的に示されている．細かく分散した硬質第二相はマトリックスの流動応力の増加(例えば分散か析出硬化による)を引き起こし，それは一般に，耐磨耗性の増加をもたらす．このように，焼入焼戻鋼の炭化物の体積分率と耐磨耗性の間で直接の相関関係がある．
'石黒'訳
その上，与えられた炭化物の体積分率に関して，その耐摩耗性は粒子間の間隔がより短くなる微細な炭化物の配列によって高められる．硬い層の同種もしくは似たような材料の析出（例えば析出硬化によって形成される）は耐アブレーション性において違う物質の析出より大きな効果を持つ． しかしながら第二相粒子の高い体積分率は耐アブレーション性にとって望ましいというこの一般的な基準は，普遍的に当てはまるわけではない．その素地もまた適正な靭性を有しなければならない．その素地自体が脆く，粒子素地の接触面が弱いある材料において，硬い粒子は内部の応力集中として作動することができる．それによりクラックは接触面ででき始め，その時その素地を通って伝わる．その時，そのような材料において第二相の高い体積分率は破壊力学によって摩耗が高められるという結果になる．このタイプの挙動は摩擦抵抗が炭化物の含有量が増加するとともに低下するマルテンサイト工具鋼において見られる
'影山'訳
もし硬質相粒子大きさにおいて摩耗損傷の尺度で類似点があるか大きいなら、材料は不均一に反応するだろう。硬質相の領域でのアブレシブ粒子の動きは塑性流動や破壊を導き、そしてアブレシブ粒子、硬質相粒子と金属素地の大きさと機械的特性と同様にそれぞれのアブレシブ粒子によって運ばれる荷重と形状に依存する。結果として生じる摩耗率もまた硬質相と金属素地との境界面に依存するだろう。それらの環境での複雑さの可能性の一例は白鋳鉄の挙動によって与えられる。図6.23はどのようにCr-Mo白鋳鉄の範囲での耐アブレシブ摩耗性がカーバイド含有量で変化するのかを示している。この合金のシリーズはオーステナイト系の金属素地での(Fe_3 Cr_4 ) C_3カーバイドの変化する体積分率を含んでいた。合金のバルク押込み硬さはカーバイドの体積分率とほぼ直線的に増加した。
'木村'訳
ガーネット粒子を用いたピンオンディスクアブレーション試験（6.3.5節参照）は、耐摩耗性とバルク硬度の間に公正な相関関係を示した。（図6.23（ｂ））。しかし、炭化ケイ素研磨剤では（図6.23（ｃ））、逆相関がみられました。磨耗率は、炭化物含有量とバルク硬度と共に増加する。これらの二元磨耗条件化では、硬質炭化ケイ素粒子は脆い炭化物相貫通してそれを割れさせたが、より軟質のガーネット粒子は破壊を引き起こさなかった。そのような挙動は単に研磨材料の硬度の関数ではない。それは試験の条件によっても異なる。三元ラバーホイールアブレーション試験（6.3.5節参照）では、アルミナ粒子による全く同じホワイトアイアンの磨耗率は、約30%の炭化物体積分立で最小に達し、その後再び上昇した。この磨耗率の上昇は、やはり炭化物の破壊と関連していた。この場合、それはおそらく石英によるより柔らかいマトリックスの優先的な磨耗によって引き起こされ、それは塊状の炭化物粒子を露出させ、それらをより割れやすくした。
'今野'訳
超硬合金（サーメット）はアブレッシブ磨耗に抵抗し，硬い相と軟らかい相を含む別の種類の合成材料を作るために使われます．この場合，より軟質で延性のある金属バインダー中の非常に硬い炭化物粒子の高い体積分率（典型的には６０～９５％）．最も一般的に使われている炭化物は1900～2100HVの硬度を有するコバルトマットリックス中の炭化タングステンです．高い硬度は低い結合剤含有量および，小さい炭化物粒子と関連している．そのような高いバルク硬度では超硬合金の磨耗はしばしば軟らかい磨耗と見なすことができる（6.21節参照）．例えば約800HVの硬度を有する石英による磨耗はこの範疇に入る可能性があります．炭化ケイ素やダイヤモンドなどかなり硬いアブレッシブ磨耗粒子は“硬い‘磨耗をもたらす．磨耗のメカニズムと結果的に生じる磨耗速度の両方はアブレッシブ粒子とサーメットとの間の硬度の比率に強く依存し，異なるアブレッシブ粒子による硬い磨耗と軟らかい磨耗の間の移行が一般的に遭遇する．
'目黒'訳
れらの複合材料の複雑な挙動は、「耐摩耗性」は固有の材料特性とどうしてもみなされないということをはっきりと説明している。磨耗率や磨耗メカニズムは、材料の成分や微細構造だけでなく、さらされている状態のとても重要な範囲に依存する。 6.3.4節 潤滑と環境の効果 潤滑と自然環境（空気中の酸素含有量あるいは湿度）はどちらもアブレージョンによる磨耗に強力な影響を及ぼしうる。アブレシブ磨耗における潤滑の効果は、すべり磨耗と非常に対照的である。5章で見たように、すべり磨耗における潤滑は、表面の接線応力の低下や粗い接触面の発生と粗さの度合いの減少によって、摩擦を減らす傾向がある。相対的に、滑らかな表面たちの間に保護潤滑膜が容易に形作られる。
'石﨏'訳
このような観察は様々な微細構造での延性と加工硬化の比を考慮することで理解できる．オーステナイト系と比較して延性の低いマルテンサイト系は，溝の体積の多くが摩耗粉として除去され，そのためにより高いKの値を取る．パーライト系やベイナイト系の鋼は中間的な振る舞いを示す．マルテンサイト系やベイナイト系に残留オーステナイトが含まれる場合，アブレージョンと高い延性の関係で粒子が硬くなることでアブレージョン摩耗への耐性をもつ． 図6.18に示すいくつかの材料，特に白鋳鉄や高硬度のセラミックはバルク硬度の増加に伴って耐摩耗性の減少を示す．これは，深刻な接触状況下で破壊によって脆性材料が摩耗することを考慮することで理解できる（章6.3.2参照）．この状態は，最大耐摩耗性は硬度と靭性の中間値である材料で生じ，一般に，高い硬度の材料は破壊靭性が小さく，低い硬度の材料は破壊靭性が大きい．あらゆる材料の実験値によって図式化された図6.21を見てもその関係を見ることができる．
'加賀谷'訳
この図は，破壊靱性と対磨耗性(１/Q)と硬度間の過度摩耗条件化における関係性を示している．セラミックのような低い破壊靱性の物質は，硬い傾向にあり，アブレシブ摩耗における対磨耗性は脆性破壊により靱性とともに増加する．金属類のような高い靱性の物質は対照的に柔らかい傾向にあり，脆性破壊よりも塑性変形によりアブレシブ摩耗の影響を受ける．このような物質において，耐摩耗性は硬度の増加とともに上昇し，または靱性の増加とともに減少する．硬度と靱性の中間値において，硬い工具鋼や白鋳鉄のような物質では，硬度と靱性は重要な役割を担う．図6.21に示される簡易化された図では，例としてアブレシブ粒子の増加やそれらが角ばっていること，また垂直荷重により，接触状態が厳しくなっていくことで，破壊が支配的なレジームの範囲の増加，そして対磨耗性の最大値から結果として高い破壊靱性へとシフトをどのようにするのかということが示してある．
'大谷'訳
多くの材料は軟らかい金属素地の中に硬い相を含んだアブレシブ摩耗にさらされている. 鋳造や鍛冶, または熱処理の間中成長するであろう微細構造はまた材料は2つもしくはより多くの明確な構成要素から統合した複合物であろう. 例えば, 硬い遷移金属カーバイド（例えば, VC, NbC, M3C, M7C3等）は重要な硬い鋼の白鋳鉄(例えば, Ni-Cr, 高 Cr or 高 Cr-Mo 鉄), コバルトを基礎とした合金(例えば サテライト)そして超硬合金(サーメット 例えばWC/Co) の構成要素を形作る. 全てのこれらの材料は彼らの暇網率に用いられる. ポリマー, セラミックもしくは金属素地そしてより硬く補強されている構成要素もまたそれらがアブレシブ摩耗に危険にさらされるところでも用いられる.