第07回英文輪読
'青木'訳
酸素含量と湿度が影響力のある要素となるのとともに，大気組成はアブレシブ磨耗率に影響を与えることができる．ガス環境の効果はたいてい複雑であり．延性のある金属においてでも，その効果は大きさや方向によって異なる．一般に，金属の磨耗において酸素は潤滑作用を提供する．アブレシブ粒子の先端で新たにさらされた金属表面の急速な酸化は低いせん断強度の薄い酸化物フィルムを生成し，粒子と金属の間の粘着が減る．似たような効果は従来の金属切削において観察される．そこでは酸素，塩素または四塩化炭素のような攻撃的な小さい分子は部品と切削工具の両方の上にあるきれいな金属と急速に反応することができる．また，工具上の摩擦力を減らすことができる．酸素が欠如した金属のアブレシブ磨耗は普通，存在しているものよりもシビアでなく，切断が効率的でないだけではない．二元磨耗では金属のアブレシブ粒子の間の粘着が増加し，磨耗率の段階的な減少をもたらす．それは次の節で述べるキャッピングとクロッギングが原因である．
'石黒'訳
大気の湿度の水準で空気中の摩耗率の大幅な依存に関して良い証拠がある．極端な例は酸化鉄の粒子によってコーティングを施された磁気テープによって，磁気記録ヘッドのアブレーション中に見られる．そしてそこでは摩耗率が10倍までの増加は周囲の空気の1％から50％の相対湿度の増加を意味している．実験室での2元摩耗試験でははるかに小さい効果が発生するが，それはおそらく酸化物の機械特性と類似している潤滑作用だけでなくアブレシブ粒子の機械特性おいて，湿度の影響に関連されている．セクション5.10.4で私たちが見たように，環境の要因はセラミックの材料の滑り摩耗における重要な役割を果たし，そしてセラミックが摩耗表面を形成する時と同じくらいすぐにセラミックが摩耗粒子の構成要素となるときに，同様の効果が発生すると予想される．
'影山'訳
6.3.5アブレシブ摩耗の試験の方法 最も一般的に使用されるアブレシブ摩耗の実験室での実験は固定砥粒に反して滑るピン状の試験片か、二つの間に連続的に与えられる自由なアブレシブ粒子で平らな試験片に反して滑る回転するホイールのどちらかを用いる。図6.26(a)から(c)は試験片のピンが固定アブレシブ粒子に反して滑る場合での三つの共通の変形方法を示し、二元摩耗を与える。工業用の固定砥粒紙か布は通常対向面のために使われ厳密な大きさの分布の、平らに分布されたグリッド粒を運び、強固な樹脂によって基層に固定される。いくつかの機構は摩滅性において革新的な減少の原因である。粒子の破壊は、切刃の数の減少を導き、バインダ樹脂から全体の粒子の除去や（シェリング）、化学的、機械的、もしくは熱的機構による粒子の接触エリアを丸くし（アトリション）、粒子の先端への摩耗粉の付着（キャッピング）、適用荷重部分に運ぶために粒子間の空間の中に摩耗粉の蓄積がある。
'今野'訳
超硬合金（サーメット）はアブレッシブ磨耗に抵抗し，硬い相と軟らかい相を含む別の種類の合成材料を作るために使われます．この場合，より軟質で延性のある金属バインダー中の非常に硬い炭化物粒子の高い体積分率（典型的には６０～９５％）．最も一般的に使われている炭化物は1900～2100HVの硬度を有するコバルトマットリックス中の炭化タングステンです．高い硬度は低い結合剤含有量および，小さい炭化物粒子と関連している．そのような高いバルク硬度では超硬合金の磨耗はしばしば軟らかい磨耗と見なすことができる（6.21節参照）．例えば約800HVの硬度を有する石英による磨耗はこの範疇に入る可能性があります．炭化ケイ素やダイヤモンドなどかなり硬いアブレッシブ磨耗粒子は“硬い‘磨耗をもたらす．磨耗のメカニズムと結果的に生じる磨耗速度の両方はアブレッシブ粒子とサーメットとの間の硬度の比率に強く依存し，異なるアブレッシブ粒子による硬い磨耗と軟らかい磨耗の間の移行が一般的に遭遇する．
'澤'訳
強摩耗条件下では、アブレシブ粒子はカーバイド粒子と結合相の両方で塑性変形を引き起こす。個々のアブレシブ粒子が接触する面積は普通カーバイド粒子よりもかなり大きい（一般に0.3～3）。そして摩耗は主に塑性掘り起しと塑性切削により生じ、より脆性の高い複合物に局所的な関連破砕を伴う。耐摩耗性とカーバイド粒子の結合相での平均自由行程の間に、図の6.24(a)に見られるような相互関係が見られる。短い平均自由行程は、カーバイド微粒子の高い体積分率により、最も高い耐摩耗性を与える。それは高いバルク硬さももたらす。図の6.24(a)は金属結合相の強度の影響も説明している。鉄―ニッケル合金は、コバルトよりも高い強度を持ち、同じ平均自由行程でより強い耐摩耗性を示す。熱処理によって結合強度をより増すと(それはマルテンサイトを生成する)、耐摩耗性のさらなる増加を引き起こす。
'長谷川'訳
弱摩耗領域は、アブレシブ粒子がサーメットよりも柔らかい場合は、摩耗速度は遅くなり、摩耗のメカニズムは異なる。図6.24は石英による超硬合金の炭化タングステンの摩耗率が硬質摩耗領域における炭化ケイ素による摩耗率の約1/10であることを示す。弱アブレシブは炭化物粒子に塑性溝を生成できない。その代わり、炭化物粒子に加えられる周期的な法線力と接線力がそれらをわずかに動かす。これらの繰り返される小さな変位は粒子間からの金属のバインダーの緩やかな押し出しを引き起こす。押し出されたバインダーは塑性変形によるアブレシブ粒子によって除去される。バインダーの除去はおそらく疲労のメカニズムによる炭化物粒子の剥離またはそれらの亀裂のいずれかをもたらす。硬質摩耗の場合のように、おそらくこれがバインダーの材料の押し出しの容易さに影響するため、耐摩耗性とバインダー中の平均自由行程との間に強い逆相関がある。
'目黒'訳
異なる種類の摩耗試験の結果間での違いに与えるさらに進展した効果は，研磨粒子に与える支援のコンプライアンスに関係している。図6.27(a)のラバーホイール試験では、２相材料あるいは混合材料のより硬いほうの相との接触面の粒子は、ゴムをより深くまで貫くことができ、そしてこのようにもしその支援がより精密ならば、総荷重をほとんど伝えない。一般に、２元摩耗試験の状態と同じように。それゆえ、硬くてもろい相が壊すためには図6.27(b)のような厳密な摩耗支援よりも、より柔らかな支持となる傾向が大きくなるだろう。
'石﨏'訳
しかしながらアブレシブ粒子は，流体もしくは弾性流体の層の厚さよりも粒子の大きさが大きいために，層によって粒子と対面の接触を防げない事がある．そのためアブレシブ摩耗では，潤滑によって，硬い粒子がないときに見られる摩耗量の大きな減少が起こらない場合があり，場合によっては増加することもある．例えば，二元摩耗下での金属のアブレシブ摩耗の量は，潤滑油が使用されると3倍まで増加しうる．この増加の原因については，既に6.3.1章で示しているが，潤滑油がアブレシブ粒子と金属表面の摩擦を低下させ，それによって迎え角が切削モードになる範囲まで大きくなることで，材料除去効率の増加が生じる．潤滑は更に，摩耗粉がアブレシブ粒子に付着することを抑制する二次的な効果もあり，多様な接触状況下において，キャッピングや目詰まりなどによるアブレシブ摩耗の劣化を遅くする事ができる．これらの理由のために，潤滑による摩耗量は，塑性的なアブレージョン構造が支配的であれば増加が期待できる．
'加賀谷'訳
脆性物質における潤滑の効果はより一貫性がない．潤滑による接線力の低下によりクラックの生成が減少すると考えられているにもかかわらず，クラック端部における局所的な化学反応を通して，クラックの成長率の増加をもたらすと考えられている．環境因子はまた，他の一定の摩耗条件化において，破壊が支配的な摩耗から塑性変形への転移を引き起こす．セラミックのアブレシブ摩耗における潤滑油などの液体がもたらす影響を示した図は，一連のアルミナ試験により与えられる(図6.25)．摩耗率は，異なる液体条件化において最大10倍まで変化する．3級アミルアルコール中では摩耗率は著しく高かったにもかかわらず，水溶製油中や水中における摩耗率は空気中のものよりも低かった．
'大谷'訳
プラスチック材料とエラストマーにとって, 潤滑の影響は最も有力な摩耗メカニズムに依存する. 塑性加工によるアブレシオンを与えられた硬い熱可塑性物質は延性金属の類似した方法に応じる．そして潤滑は十分に摩耗率を増加させるであろう. もし材料がエラストラーまた摩耗メカニズムは面力によって動かされ成長した進行性クラックの一つであれば, 潤滑剤は減少している作用摩擦力によって摩耗率は減少する. この理由によって, 濡れた状態でのゴムタイヤ車両のアブレシブ摩耗率は乾いているときよりも遥かに低くなる.